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Wounded Mass - ss:27

生還した少女

 まぶしさに目を開くと、いつの間にか寝台に寝かされていた。呼吸しようとしてむせる。
鼻や口から液体が吹き出した。
 「起きてうつむきなさい」女性の声がした。「まだ肺にLCLが残っているのよ。
全部出してしまいなさい」
 むせながら片ひじをついて上体を起こし、うつむいた。口を開くと大量の液体が流れ出た。
 「かはっ」思わず悲鳴が出る。
 全身が重たかった。
 「綾波レイ、あなたの名前よ。覚えておきなさい」
 振り向くと、前をはだけた白衣から、濃紺のシャツと黒のスカートをのぞかせ、
濃い肌色のストッキングに、黒い先のとがったハイヒールの足を組んだ女性がパイプ椅子に
座って片手にコーヒーカップを持っていた。傍らには丸い喫茶用の机があり、
たたまれた衣類が乗っていた。
 「私は赤木リツコ」赤木リツコはコーヒーをすすった。「あなたの後見人」
 「こうけんにん?」
 赤木リツコはいらいらした口調になった。「あなたの生命に責任を負っている者」
 理解できないという意味で首を振る。
 赤木リツコはいらいらした口調のままで言った。「床に降りて立ちなさい、病室に移動するから」
 尻をいざるようにして横になっていた寝床の端に移動すると、両足を降ろし、ちょうど
そこに置いてあったスリッパをはいて立ち上がった。身に付けているものといえばスリッパだけ。
 「…寒い」思わず現在の状況を口に出した。
 赤木リツコはあごで机の衣類を示した。「着なさい」
 手を伸ばし、つかんで広げると、それは入院患者が着る診察用の白衣だった。
 両腕を通し、前を合わせると、和服のように重なった。幅の広いマジックテープが
ところどころについていて、これではだけないように押さえる仕組みだった。そこで、
上から順番にマジックテープを合わせていった。
 赤木リツコは黙って見ていた。
 ひざの下に一番下のマジックテープがあって、かがみこんでこれを合わせ、
腰を上げて赤木リツコに正対した。
 赤木リツコはコーヒーカップを机に置き、灰皿につけっ放しにしていた煙草の吸い殻を
こすり消して立ち上がった。
 「入院病棟に行くからついて来なさい」
 そして返事も待たずに歩きはじめた。
 後を追う。
 横になっていた寝台と、三枚の白いカーテンのついたてと、無数の姉妹たちはすぐに
見えなくなった。
 エレベータホールには一基のエレベータがあるだけで、扉を開いて待機していた。
間口は一メートル強と比較的狭かったが、奥行きは深く、三メートル余りあった。
移動用の寝台のはいる大きさ、つまりは病院のエレベータだ。
 赤木リツコは先にエレベータに乗り込み姿勢を変えて入口に向き手で差し招いた。
 中にはいり、やはり向きを変えて赤木リツコと並ぶと、赤木リツコは階数のボタンを押した。
 扉が閉まり、エレベータは上昇を始めた。
 揮発性の強い液体はもうほとんど体表に付着していなかった。ただまだ髪に
少し濡れている感触があった。
 エレベータの中でふたりは無言だった。
 やがて、エレベータが停止し、扉が開くと、ふたりはこれまでとは打って変わった
喧騒にさらされた。
 大勢の人間の発する音の集合体としての無意味な雑音。
 これにはまったく馴れていなかった。思わず両耳に手を当てる。
 赤木リツコは横目で一瞥すると先に立って歩き始めた。相変わらず、無言のままだ。
 後を追う。
 行き交う看護士や聴診器を首にかけた医者の白衣、普段着や寝間着や白衣の患者の群、
金属製のトレイに載せられた器具が音を立てて運ばれていく。
 ふたりはその混雑した廊下をまっすぐに進んで入院病棟に移動した。
 ここでは人通りはもっと少なく、ふたりは並んで歩いた。
 「最低二晩、入院してもらうわ」赤木リツコは聞いていることを確かめもせずに話し始めた。
「その間に検査を受けてもらいます。異状がなければ、退院」
 「けんさ?」
 「血液、血圧、脊髄液、リンパ液、尿、便、全身レントゲン、X線造影、CTスキャン、MRI、
PET、身長、体重、座高、胸囲、股下、足のサイズ、視力、聴力、色盲、色弱、反射、腹部エコー、
胸部エコー、脳波、心電図、肺活量、必要があれば胃カメラ、直腸カメラ…そんなところかしら。
あと、未成熟の卵子を十個採取するわ」
 それらの用語のほとんどが意味をなしていなかった。
 それからそれらの検査が本当に一つずつ順番に実行されていき、
どんなものかが嫌というほど分かった。
 そして二夜目を入院病棟で過ごそうとしたその最後の日の夕方、訪問者があった。
 そこは入院患者と面会者が使う談話室の隅で、今は面会時間を過ぎていることもあり、
ふたりの他には誰もいなかった。大きな窓から差し込む夕陽の最後の残滓が部屋を赤く染めていた。
 「綾波っ」
 同い年くらいの少年だった。
 「綾波…ミサトさんから聞いてきたんだ、よかった、生きてたんだね」
 少年は涙を流していた。
 そしてその嬉しさと涙でぐしゃぐしゃになっていた顔の表情は、少しずつ変化していき、
やがて何か理解できないものを見ているような顔つきになった。
 「…綾波、ぼくのことがわからないの?」
 「知らないの」
 「綾波…」
 「多分私は三人目だと思うから」
 なぜそんな言葉が出て来たのか分からなかった。それでもそれが事実だという理由のない確証が
あった。
 少年を置き去りにしたまま立ち上がり、病室にもどった。少年は追いかけてこなかった。
談話室を出る時にちらりと振り向くと、少年は茫然としてその場に立ち尽くしていた。
 翌朝、赤木リツコが病室までやって来た。
 「検査結果は正常、退院していいわ」そして、たたんだ紙と鍵をさし出した。
「あなたの住む部屋の鍵と地図」その下から一枚のカードが現れた。自分の顔写真がはいった
ブラスティックのカードだった。「特務機関ネルフの身分証明書、兼提携交通機関の通行証、
失くさないように」
 「はい」
 赤木リツコは視線だけで部屋の隅にあるロッカーを示した。
 「着替えはあの中。手続きは私がするから、行きなさい。明日から、第壱中学校に通って。
必要があったら呼び出すわ、これ携帯電話。それから、処方されている薬を飲み忘れてはだめ」
 質問は許さない、という風情で赤木リツコはくるりと振り向き、部屋から出て行った。
 地図と、鍵と、身分証明書と携帯電話と薬。
 身分証明書には綾波レイという文字が読めた。
 何の意味もない文字の羅列、これが私を他者と識別するための記号ということなのかと思う。 
 ロッカーの扉を開くと、たたまれれた下着、靴下、シャツ、上着と靴が入れてあった。下着は白、
靴下はほとんど黒に近い、濃い紺、シャツは白に赤いネクタイ、そしてジャンパースカートの上着は
明るい青だった。靴は白のズックだった。
 白衣を床に脱ぎ捨てると、お仕着せの服に着替えた。どれもぴったりの寸法だった。
 注意深く観察すると、シャツと上着は新品ではなかった。靴もはきなれていて
誰かが使っていたことが分かった。
 手続きは必要ない、赤木リツコはそう言った。そこで、そのまま病室を出、入院病棟の廊下を進み、
面会室の横を抜け、一般病棟の受け付け広間を通り抜けて外に出た。
 殴りつけるような強烈な日光と暑気に打ちのめされた。
 一瞬めまいがして、病院の玄関のてすりに寄りかかった。
 しばらくその姿勢を続けていると気分が落ちついて来た。
 白衣の看護士が声をかけた。「どうしたの、気分が悪いなら中で休めば」
 視線を上げ、看護士に向かって首を振る。
 ゆっくりと姿勢を起こし、街路に出た。
 起動車両の駅まで歩き、二駅目で下車して徒歩十分。
 規則的な建設機械の音が大地を揺るがすように響いていた。
 立ち並ぶ高層建築の建物の一番端が、割当てられた部屋のある棟だった。
 吹き出す汗をぬぐい、建物の前で部屋のあるあたりの階を見上げる。
 建物は陽炎で揺れてみえた。
 エレベータは建物の居住区にある廊下の両端にあった。
 玄関から近いほうに進み、呼び出すと、ちょうど一階にあったとみえてすぐに扉が開いた。
 無人のエレベータに乗り込み、目的の階を指示する。
 エレベータは不気味なきしり音とともに上昇した。
 やがて、目的の階に到着し、がたりと揺れて停止、呼出し音とともに扉が開いた。
 廊下に出る。
 誰もいない。
 廊下を進み、指示された部屋の前に立った。
 番号の打ち込まれた板が玄関の扉に埋めこまれ、扉の下の郵便受けはチラシやダイレクトメールの
たぐいが押し込められていた。
 鍵を取り出し、鍵穴に挿そうとした。
 その手が止まり、扉のにぎりをつかんで回す。
 鍵はかかっていなかった。
 玄関扉を引き、中にはいって後ろ手に扉を閉じた。
 薄暗い玄関からまっすぐに短い廊下があり、その先がほんのりと明るかった。閉じ込められた
空気はいっそう暑く、しかし乾いているためか、それほどの不快感はなかった。
 靴をぬぎ、黒いスリッパを見つけてつっかけ、右手に洗面所に続くと思われる扉を見ながら
廊下を進む。
 左側に向かって広い居間があった。正面に、壁に沿って寝台があり、その上に窓があって
遮光カーテンが閉じられていた。その左側は床から天井までのカーテンが閉じてあり、
多分ベランダに出る引き戸になっていると思われた。右手には壁の端に背の低い衣装だんす、
その手前にもっと小さな冷蔵庫があった。入口の左手にはやはり小さな流しがあって
何枚かの皿がきれいに洗われ、積み上げられていた。
 それではここは前任者の住んでいた場所なのだろうか。
 部屋の中央には食事用の小さな机があって、椅子が二脚、向かい合わせに置いてあった。
ふぞろいで、別々に調達したものと見えた。
 まっすぐに進み、衣装だんすの前に行く。
 手を伸ばし、熱で変形しためがねを取り上げてじっとながめた。
 知らないはずのめがね、それも男性用で、薄い橙色に染めてあった。
 持っていると、不思議な感情が心の底からわき上がり、心が震えるような気がした。
 そして、その感情は涙となってめがねに滴り落ちた。薄赤く着色されたレンズの上に、
涙の粒がはじけた。
 「これ、涙…泣いてるの…わたし」
 このめがねがどうしてそんな感情を引き起こしたのだろう…
 動くこともできずに立ち尽くしてめがねを見つめながら、溢れ出る涙を止めることができなかった。
 その時、背後で扉の開閉する音がした。
 玄関の扉だ。
 鍵をかけていなかったことに気付く。
 振り向くと、ひとりの少年が立っていた。
 明日から赴くことになる第壱中学校の制服を着た、少年。
 昨日面会室であった少年。
 「あなた、誰」
 答えは知っていた。
 碇シンジ。
 めがねの持ち主の息子。同級生。エヴァンゲリオンのパイロット。
 私と同じ…だった。
 初めて私という存在を感じた。
 碇シンジと対峙し、自分を思った。これは何、どういうことなのだろう…答えは、わからない。
 シンジは両手をだらりと下げて立っていた。荷物も鞄も何も持っていなかった。
呼吸はゆっくりと落ちつき、しかし緊張を隠せない表情だった。
 「綾波…」
 シンジは言葉を選ぶように慎重に話した。
 「綾波、これはとっても重要なことなんだ。僕の言うとおりにしてほしい、お願いだから
言うとおりにしてほしいんだ」
 「何をすればいいの、何故?」
 「理由はわかる。全部済めば理由は分かるんだ」
 シンジは歩み寄った。
 「めがね、父さんのだね。覚えてるの」
 首を振る。
 「でも、どうしてかわからない、見ていると、涙が止まらないの」
 シンジは微笑してうなずいた。
 「綾波を、身体はって守ったしるしだから、それ」
 シンジはそっと手を伸ばし、手首をつかんでめがねを元の衣装だんすの上にもどすよう誘導した。
 その手は暖かく、柔らかく、芯には力強さがあり、軽く握られているだけなのにも関らず
抵抗できない意志の力があった。
 誘導に従ってめがねを衣装だんすの上にもどす。
 シンジは手を離した。
 「あ」
 思わず声が出た。
 「どうしたの、綾波…痛かった?」
 首を振る。声が出なかった。
 「そう…よかった」
 次の一言には打ちのめされた。
 「僕達は…恋人同士だった…いや…今でもそうなんだ」
 言葉といっしょにシンジの顔が迫ってきた。
 シンジの告白の余りの内容に物が考えられなくなった。
 恋人同士…この人と…いつ…どこで…私が?…わたしが?…わ・た・し・が・?
 「思い出してよ、綾波」
 シンジの顔がもう手のひらがはいらない距離に近づいていた。
 そして口づけ。
 本当に軽く、少し乾いた唇が触れるか触れないかのような口づけだったが、
唇から全身にびりびりと電撃のような衝撃が走った。
 「ああっ」小さく悲鳴をあげる。
 シンジの左手が抵抗する右手の肘を下から軽く、本当に軽く、ささえるようにつかみ、
右手が腰にまわって身体を支えた。
 新しい刺激がまた全身をぶるぶると震わせた。
 大きくため息をつく。それがやっとだった。
 あらためてシンジを見る。
 シンジはやはり微笑していた。
 心が穏やかになって行く、どんな心配、どんな恐怖も忘れてしまえるような、そんな微笑だった。
 「綾波…本当にうれしいよ…もどってきてくれて…でも、
僕にはまだやらなきゃいけないことがあるんだ」
 「何…その、やらなきゃいけないことって」
 やっとの思いで質問する。答えは又しても混乱するものだった。
 「これからすること…ふたりで」
 シンジはもう一度唇をよせ、重ねた。
 今度はもっと深い口づけだった。思わず後ろに頭をそらそうとしたが、シンジの左手は
いつのまにか肘を離れて後頭部にまわっており、
後ろからしっかりと頭を押さえられてしまっていた。
 両目を大きく見開いた。
 シンジの目と視線が合った。
 シンジの目は安心するようにと言っているようだった。
 両目を閉じる。
 シンジの唇がさらに力をこめて接合し、口を開くように軽く動いた。
 あごから力が抜け、接合したままで口を開く。
 シンジの舌が伸びて、歯の表面にさわった。
 無意識に舌が伸び、シンジの舌と絡み合った。
 全身に衝撃が走り膝から力が抜けていった。
 腰に当てたシンジの手にいっそう力がはいり、倒れずにすんだ。
 シンジは唇をあわせたまま、腰の手でふたりを寝台の方に誘導した。
 ほんの二歩で寝台の一番端に届く。
 シンジはふたりを寝台に座らせた。唇は合わさったまま、
互いの口内をすすりつくそうとするように絡み合った。
 長い口づけは小休止を迎えた。シンジが大きくため息をつくように唇を離した。
 あえぐような呼吸が止まらない。先程までの感触を確認するように口を閉じ、唇を動かし、
舌を歯の裏側に当ててうごめかす。又しても全身を衝撃がはしった。
唇から体中に走る震えるようなむずがゆいような感覚の何と心地よいことか。
 寝台に腰を下ろし、力なく両足を投げ出してシンジにもたれかかった。
 シンジは身を乗り出し、唇を重ねたまま、ゆっくりと身体を後ろに倒し、最後に寝台に横たえた。
そして自らは半身の姿勢で額の髪の毛の生え際をそっとなでていった。
 シンジの指が通り過ぎた後を、快感の波が追いかけて言った。
 もっと!もっとさわって!もっと心地よくしてっ…それは言葉にはならなかったが、
全身を身もだえするようにゆらし、それでも唇を離さないことで意図は伝わった。
 シンジの指は額から頬を下りあごのわきから首に降りた。
そして、耳の後ろに指を差し入れて軽くこすりあげた。
 頭の芯がしびれて、身体が自由に動かないような気がした。
 シンジの手はいったん離れていった。
 自由な両手でシンジの手首をつかむ。もっと、と求めるように引き寄せた。
 シンジの舌は口内でうごめき、追従して応えるとまたそこからぞくぞくするような感情が
引き出された。
 感覚とはこんなにも多彩なのかと驚く。
 悲しみ、おどろき、歓び、そして悦び。
 片手が小刻みに震えながら伸び、シンジの身体に当った。
 そこはベルトの少し上のわき腹で、シンジは両目を閉じ、ぶるっと震えるとその手を握って
背中に回し、閉じていたこぶしを開かせて、手のひらで背中を押すように誘導した。
 シンジの背中は暖かかった。すこし汗ばんで濡れたシャツ越しに背中の暖かみが伝わって来た。
 じっとしていられず、背中の手を動かして、新たな刺激を求めた。
 手のひらや指の一本一本から、暖かみとともに新しい刺激が伝わった。
こんなところからも気持ちのいいことが、とおどろきながら、
手は休むことなくシンジの背中をなでまわした。
 全身が熱くなってきた。顔は上気し、拡張した血管の赤が浮かび上がって白い膚を染め上げた。
いつのまにか心臓の鼓動がいつもの倍近くに早くなっていた。脈拍も大きくなっていた。
 その、どきん、どきんという調子に合わせるようにシンジの手が動いた。
 そして口内からシンジの舌が退いていった。
 いかないで…その思いは届かなかったがもっとちがった体験がはじまった。
 シンジの唇は斜めにあごをよぎり、首に進んでいった。
 舌が舐め上げる感覚に敏感に反応する。
 解放された口が大きく開いて激しく息をつき、あえいだ。
 シンジの片手がシャツのボタンをはずした。
 はっとして我に返る。
 はだけたシャツの前を合わせようとするその手をシンジにやさしくつかまれた。
その手は再びシンジの背中に導かれた。
 シンジの唇と舌は、首からさらに下がって、今、広げられたばかりの膚に向かって進んでいた。
 じんじんするようなしびれがシンジの唇の後を追いかけた。
 シンジの背中に回った両手はシャツ越しにシンジの背中をつかみ、
もむようなしぐさで自分に引き寄せようとした。
 シャツの二番目のボタンがはずされた。さらにその下も。
 ブラジャーのフロントホックまでが何の抵抗もなくはずれた。
 小振りの胸があらわになった。
 シンジの手は横にまわり、胸の下あたりのわき腹を軽く押すと、
シャツと上着越しに手のひらを大きく広げ、五本の指を順番に動かしていった。
 もう上半身の感覚がほとんど一つになって、どこを刺激されているのか分からないような
状態になっていた。
 シンジの舌は胸の一番上の辺り、乳房の盛り上がりの始まりの辺りを丹念に舐め上げていたが、
そのまま横に移動して反対側の乳房を舐めていった。
 荒い息が止められなかった。はあはあと、激しく喘ぎながら身もだえるように、
それでも抵抗しない。余りの心地よさに我を忘れていた。
 シンジの反対側の手が背中に差し込まれ、上体を軽く起こされた。
ジャンパースカートの幅広の肩ひもがずり下げられた。
 協力して手を抜く。
 そして反対側の手も。
 シンジの手は上着の後ろ襟の辺りを持って背中を下に下に押しやった。
そして反対側の手が協力して尻を持ち上げて通し、上着を脱がせた。
シンジは片手で器用に上着を畳むと、隣り合った衣装だんすの上にそっと置いた。
 めがねが上着に隠された。
 シャツの残りのボタンが全部はずされた。
 また上体をすこし起こされ、片方ずつ袖を抜いてシャツもまた取り去られた。
そしてフロントホックのはずれたブラジャーも。
 むせ返るような熱気の中、服を脱いでも寒さは全く感じなかった。
それどころか興奮してますます身体が熱くなっていった。
 シンジの両手は両方の胸を下から持ち上げるように刺激した。
唇と舌は執拗に左側の胸のあたりを嘗め回していた。
 両方の胸が充血して固くなり始めた。
 膚はますます赤身をおび、薄い桃色の乳輪が真っ赤な薔薇の花のように汗のしずくに輝き、
その中心の乳頭がむずむずするような感覚とともに勃起した。
 自分でもそんなことをしていることに気づかないまま、シンジのシャツのボタンを
下からはずしていった。
 一番上のボタンをはずすとき、シンジは協力して猫背になりふたりの間に手がはいるようにした。
 シャツをはだけたシンジの胸がはだかの腹に当たり、その感覚に歯を食いしばった。
 シンジの唇と舌はいったん胸を離れて、再び唇にもどってきた。
 情熱的に迎える。
 シンジは唇をあわせたまま身体を寄せ、胸と胸が合わさった。
 固く盛り上がっていた乳頭が押し込まれてこれまでに一度も体験しなかったような
激しい痛みのような快感の刺激に打たれた。あっというまに痛みは消えて両方の胸が唇と同様に
新しい快感の源になった。
 シンジは唇を合わせて舌をからめ、両方の胸を上半身を動かして刺激しながら、
自分のシャツを脱いだ。
 一瞬、シンジの両方の肘が寝台から離れてその間だけシンジの上半身の全体重がかかった。
 胸がいっそう押しつぶされ、新しい快感が生まれて全身に広がった。
 すぐにシンジは肘をつきなおして上体を引き、また乳頭にさわるくらいの距離を
たもって刺激を続けた。
 もっと、もっと…
 両手をシンジの背中に回して引き、胸に押しつけようとした。
 シンジは抵抗しなかった。
 ふたりの上半身は固く抱き合い、吹き出す汗でふれあう膚はなめらかに動いた。
 その一つ一つの動きが全部、全身を骨の芯から揺さぶるような快感となって駆け巡った。
 シンジの片手が太ももの外側にそっと触れた。
 又しても新しい快感が生じた。両方のひざを固く閉じ、その感覚が少しでも長く持続し、
少しでも強く刺激してくれるよう、自ら足をけいれんさせる。
 両手はシンジの背中をまさぐり、存在しない目的物を探り当てようとするように不規則に動いた。
 ふとももに置かれたシンジの片手は、汗の跡を残しながらゆっくりと腰に向かって進み、
ついに下着越しに一番敏感な部分を覆うように捕らえた。
 その場所は先程から上半身の刺激に反応して、むずがゆくなるような感覚とともに緊張し、
充血していた。
 普段は存在していることすら意識していない部分が、今は何かを求めて、
動悸に合わせるようにひくひくと脈動していた。
 シンジの手のひらは下着越しにその部分を軽く押し、それから腹の上から下に向かって指を立て、
指の腹でゆっくりとこすりあげた。
 さわられた部分がけいれんするように収縮して新しい快感の波を打ち込んで来た。
 がまんができなかった。思わずひざを開く。
 シンジの手は離れていった。
 もっと、とせがむように腰を振る。
 カチ、カチという音がして、シンジがズボンを下げた。
 白い下着の中央が高く盛り上がっていた。
 シンジはその下着も片手で降ろし、床の上のズボンのあたりに落とした。
 目を閉じる。次に来るものの予感に恐れと、より強く、
より深い快感の期待との入り交じった感情が頭をもうろうとさせた。
 シンジの片手は戻ってくると、開いたひざの内側に触れ、そっとなで上げた。
 敏感になっていた部分はさわられる瞬間に赤く充血して跡にしま模様を残した。
息苦しくなり首をふってシンジの唇から逃れようとしたがシンジはそれは気に入らないようで、
唇を離してくれなかった。それで、目を大きく見開き、鼻腔を広げて息をついた。
 やがてシンジの指がまた下着にたどり着いた。
 今度はもっと直接的な刺激がもっと強く、もっと心地よく強烈に全身を貫き、駆け巡った。
尻からひざにかけての筋肉が勝手にぶるぶると震えた。
 シンジの親指と小指がそれぞれのふとももの内側に当たり、
残りの指が下着越しにその中心部をなで上げた。
 頭の中で光がはじけた。姿勢がわからなくなった。
全身がけいれんしたように伸び切ってそれから力が抜け、元の姿勢にもどった。
 はじめてシンジの指が触れている場所の濡れ具合が他の部位と違うことに気づく。
汗だけで濡れているのではないのだ。
 シンジの指がもう一度、慎重に接触した。
 重ねた唇の下で歯を食いしばる。
 その歯をシンジの舌がつついた。
 全身が内側から燃え盛っているようだった。
皮膚のすべてがちりちりと音を立てて焦げているようだった。
 シンジの指はその場所を確保したまま、軽く押し、それから退いた。しかし離れはしなかった。
 身もだえしてもっと、とねだるように腰を下げた。
 シンジの指が当る。
 当った場所から電撃が走る。
 何度かくり返すうちに下半身全体がしびれたようになって、
シンジの指の当っている場所がわからなくなった。
 閉じたまぶたに一層の力がはいる。
 シンジの手が下着の上をすべるように動いて腰から尻に差し入れられた。
 協力して尻を上げる。
 シンジは下着に手をかけ、するりと脱がせた。
さらに手はもどってきて腹にかかっている部分に手をさし入れ、ひざに向かって下げた。
 片方のひざを曲げて下着を引っかけ、足を抜いた。
 シンジの片手が、背中からわきの下に、反対側の手がひざの裏側に入れられ、
軽く持ち上げられて向きを変え、寝台に長々と横たえられた。
 シンジは上半身だけのしかかるようにして、腰から下は半身で寝そべり、片手で胸を刺激し、
片手で内股をこすりあげた。
 もっと直接的な感触は下着越しのものとは全然違っていた。この快感の強さ、
深さには果てしがないように思えた。
 軽くひざを曲げて開き、シンジの片手がその間にわり込んだ時、
力を入れてひざを閉じシンジの手を両足の間に閉じ込めてみた。
 シンジは手首を上下に振るようにして刺激を続けた。
汗と愛液にまみれてぬめる手と内腿は何の抵抗もなく、閉じられた両方の腿の間でシンジの手は
自由に動き回った。
 この刺激に耐え切れず、またひざを開く。
 シンジの手が腰の辺りをなでまわすように動き、
そのたびに無意識のまま腰が動いてさらに気持ちがよくなる。
 片手を自分の乳房に当て、あまりの固さと熱さにびくりとする。
乳輪も乳頭もいっぱいに張ってかちかちになり、細かく震えていた。
 シンジの唇が離れていった。そのままあごから首にそって唇をすべらせ、反対側の乳房に進んだ。
 両方の乳房からの刺激に思わず声が出た。
 「ああっ…」
 ようやく自由になった口を大きく開き、喘ぐように深呼吸すると、
呼応して胸が盛り上がりますます快感が増した。
 その間に、シンジの指は閉ざされた入口の辺りをまさぐっていたがついに一本だけ侵入して来た。
 内側から押し広げられるという全くの新しい体験で、痛みと快感が混ざり合った。
しかし痛みはすぐにそのまま快感へと変化した。痛みすら快感と感じられるのか、と驚く。
 その暇もなくシンジの指が内側で動き、自らの意志とは無関係にシンジの指を締めつけた。
 するとシンジは指を前後に動かし、さらに深い快感を引き出してくれた。
 もう全身が汗にまみれ、腰の辺りはさらに潤っていた。
 自分が何をしようとしているのかわからなかった。
ともかく少しでも多くの場所でシンジとさわり合っていたかった。
 足を曲げてシンジの下半身をひざの間に招いた。
 シンジは応じて姿勢を変え、両ひざの間にわり込んで来た。
 情熱的に足をからめてさらに引き寄せた。
 シンジはいったん指を抜くとそのまま手を離し、自分の腰に当てた。
 そして胸から唇を離し、少し上体を持ち上げてまっすぐに見つめた。
 目と目が合い、シンジ自身が先程まで指の占めていた場所に押し入って来た。
 それは指とは比べ物にならないほど太くて、内側から貫かれる痛みはその分ひどかったが、
恐ろしいことにそレに続く快感の波はさらに大きかった。
 目の焦点が合わなくなり寝台の中に落ちていくような気がした。
 「うあぁぁぁぁぁぁ」思わず声が出て止められない。
 その声はシンジの動きに合わせて変った。
 「綾波、動くよ」
 シンジの声に反射的にうなずく。それがどんな意味かわかっていなかった。
 シンジの腰がゆっくりと前後動した。
 そのたびに声が上がった。「ああぅ…うぁぁ」くり返し叫んだ。悲鳴ではなかった。
歓喜の泣き声だった。
 涙が溢れ出て来た。下半身も愛液でますます潤い、シンジの動きを助けた。
 それから頭の中が真っ白になり何も見得ず何も聞こえずただ全身がシンジと一体化して
ゼリーのように溶けてしまったようになった。
 気がつくとシンジは動きを止めており、じっと表情をうかがっていた。
 「気がついたの…気分はどう?」
 「よくわからない…気が遠くなっていたみたい」
 「ぼくはまだできるけど、どうしたい?」
 おもわずうなずく。「もっと欲しい」
 シンジは黙って動きを再開した。
 快感の波に洗われていた全身はあっというまにまた反応した。
 全身が赤く火照り、血管が浮き上がった。毛穴が全部開ききっているような、
うぶ毛まで総毛立つような、全身の姿かたちを保っていられないような快楽の大合唱だった。
先程よりももっと先鋭に、もっと深く、もっと大きな快感だった。
 「綾波…行くよ」
 シンジが何か言っている…何を言っているのかわからない。必死でうなずく。
背中の両腕に力がはいる。両足がシンジをしっかりとからめ取る。
 締めつけている結合部の中で何かが爆発した。爆発は何度かの波になって全身をかけめぐった。
 「あ…あ…あ…」もう声も出なかった。
 その絶頂の瞬間、心も身体もばらばらになり、すべてが砕けてくずれ落ちた。
 そして、シンジの存在をそれまで以上に間近に感じた。そこにシンジがいた。
手を伸ばせば届く、寄り添っている、抱き合っている、シンジの存在がはいってくる。
 そしてシンジの後ろに誰かがいた。シンジについて来る。シンジについてはいってくる。
 誰、あなた誰?
 シンジの存在が広がり、希薄になり、包み込まれる。後ろについてくる存在はまだ離れない。
どんどん近づいてくる。はいってくる。はいって来て、広がりはじめる。かたちはない。
 誰なの、あなた一体…
 やがて、その存在が徐々にヒトの姿を取り始める。衣服を身に付けていない、裸の姿。
同じ性別、同じ身長、同じ髪の色、同じ顔…その存在が応える。
 綾波レイ…
 それは私、綾波レイは私よ。
 私も同じ、綾波レイ。私はあなた、あなたは私。あなたに私が生まれてからの記憶を全部あげる。
だからあなたは私に身体をちょうだい。
 何を言っているのかわからない…記憶?身体?私はどうなるの、私はどこに行くの?
 あなたは私。あなたは私になるの。私の人生の続きを生きてちょうだい。
 そして怒濤のような記憶の情報が流れ込んで来た。
 又してもあの地下で生を受け、第壱中学校に通い、使徒と戦い、
シンジやアスカやトウジやヒカリと愛を交わした。そして死んだ。
 その全てが自分のものになった。
 レイはゆっくりと目を開いた。
 シンジが見つめていた。口を堅く結び、レイの表情を見つめていた。
 レイはあらためてシンジにきつく抱きついた。
 「碇君…ありがとう」
 「綾波、お帰り」
 その一言が心にしみた。
		

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