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Wounded Mass - ss:13

クラブ・チルドレンへようこそ

 なにもない日常生活というのは、実は一番残酷な世界なのかもしれない、とレイは思った。
 何の刺激もない、昨日と同じ生活をくり返すだけの日常は何の発見も喜びもなくただ見えない
牢獄に閉じ込められたまま時間だけが無為に過ぎていくのだ。レイはシンジと出会うまでの間の、
自分自身の短い人生を思い起こして身が震えるような気がした。シンジが教えてくれたことの
数々のおかげで、なにげない毎日の生活の中でいつも何かしら新発見をできようになったのだ。
 それでもレイは使徒の襲来のない生活が、望むべきものであることを知りつつもどこか
物足りなかった。
 しかし、それが実は人生に必要以上の刺激を好む危険な兆候であることにレイは気づいて
いなかった。
 碇ゲンドウの下した自室待機命令は形だけのもので、その日のうちに解除され、三人は
翌日からまた中学校に登校した。
 鈴原トウジはまだ精密検査が終わらず、退院にはあと一晩かかるとアスカとシンジは
ミサトから告げられていた。ミサトは今日も帰りが遅いという情報も同時に得ていたふたりは
レイをさそい、三人は放課後アスカの部屋にはいったのだった。
 今日、三人にはまだ使徒と化したエヴァンゲリオン参号機との戦闘の余韻が残っており、
その興奮を忘れようとするのか、それともその興奮でもって、得られる快感をより高めようと
しているのか、いつもの、交合に至る段階での心のゆとりがなかった。
 三人は玄関の鍵をかけるのももどかしく部屋に駆け込み、てんでに着衣を脱ぎ捨てると、
たたみもせずそのまま床に捨て置いて、互いの背中に手を回し三角の形で抱き合い、ほほを
寄せ合い、順番に口づけをかわし、貪欲にむさぼった。
 そして、他のふたりの感触を全身に感じながら自分自身の心と身体が興奮し、来る段階に
向けて準備が進んでいるのを知ると、そのままの姿勢で寝台にたおれこんだ。
 アスカはいつも先にシンジをさそったが、今はレイが同じくらい積極的だった。レイは一瞬
アスカを押しのけようとしたがそれはすぐに止めた。そのかわりに正面からアスカを抱きしめて
身動きを止め口もふさいでしまった。そして上からアスカにのしかかり両胸をアスカの胸に
押しつけて乱暴にこねまわした。ひざはアスカのひざを割って内側からぐいぐい押しつけて
広げていった。
 アスカは最初抵抗したがレイに唇を奪われると力が抜けてあとはレイの思いのままに協力した。
そしてレイに合わせてひざを開き、両手でレイの尻を抱いて自分に強く押しつけた。
 局部からの強い快感がふたりを襲って、ふたりは全身をぶるぶるとけいれんさせた。
 アスカはレイから唇を放した。「はあーっ、はっ、はあっ、いいーっもっともっとよーっ」
 シンジがレイの後ろからふたりのひざの間にはいってきた。そしてまだびくびくと動いている
アスカの尻の下に手をさし入れ、少し持ち上げるとアスカの両足を自分の腰の両側に回して
レイの背中に自分の胸を押しつけた。
 「ふたりとも、すごいよ今日」
 シンジはレイの耳元で言った。
 そのことばだけでレイは気が遠くなるような快感を覚えた。
 「碇君…」
 レイは尻を振ってシンジを誘った。
 シンジはすぐに応えてレイにはいってきた。
 「あ…ああ…」レイは思わず声をあげた。全身が敏感になっていてその瞬間の快感に
たえ切れないほどだった。そしてシンジの腰の動きに合わせて自分も輿を前後に動かし、同時に
アスカへの刺激も加えながら片手をアスカの下半身に伸ばし、もっと敏感な部分を探り当てて
別の周期で刺激を加えた。
 「はあっ、ふぁーす…」アスカはことばにならない悲鳴をあげて顎をのぞけらせ、両手を
レイの尻からもっと伸ばしてシンジの腰を捕らえ、乱暴に引き寄せた。
 レイの全身が押されてずり上がり、アスカに全体重をかけてしまった。両方の胸がお互いに
つぶれて、そこから一段と強い快感が全身にめぐった。
 「はぁう」レイはがまんできなかった。
 突然シンジがいなくなった。
 「え…いや」レイはうろたえたがすぐに今度はシンジが指を入れてきたのでまた背中を弓なりに
のけぞらせた。
 「あはぅ」下からアスカが悲鳴をあげて腰を動かしはじめた。
 シンジはアスカに移動したのかとレイはもうろうとした頭で考えたがそれがどういう意味なのか
よくわからなくなっていた。
 シンジの指はレイの内側をいろいろな角度から執拗に刺激しつづけた。
 レイはシンジの指を容赦なくしめあげたがシンジの指はまけなかった。レイはさらにアスカから
片方の胸がアスカの唇に捕らえられ、乱暴に吸い上げられながら乳頭がアスカの歯の間にはいり、
舌で舐めあげられさらに吸われるのに身もだえした。
 「セ、セカンドそれ…」レイは全部言えなかった。
 アスカの舌はいったん乳頭から離れ、今度は乳輪全部をくわえ込んで嘗め回し吸い上げた。
 シンジの指はレイの内部も、その周囲の外側の敏感な部分も全部自分のもののようにわが物顔で
蹂躙していた。
 両方の刺激が強調してレイを攻めあげ、レイはアスカに乗りあげたまま首を振り、両手で
アスカの乳房をつかんでもみ上げ、激しく息をついた。両肩が大きく上下し全身が波打った。
汗がふき出しふたりの汗と愛液と混じり合ってあたりはすっぱい匂いに包まれた。この匂いは
興奮をますます高めるのに手を貸した。
 アスカの腰の動きが一層早くなり、乗っているレイにもアスカの全身が硬くなってけいれん
し始めているのがわかった。
 「あー、シンジ、あーっあーっあーあーあーあーあー」アスカはもう声を出しているのではなく
て喉を震わせているだけの状態だった。
 それからシンジの指が出て行き、かわりにシンジ自身が交代した。
 それではアスカはシンジより先に絶頂に達してしまったのだ。
 レイは顔を下げて動かなくなったアスカに全身を押しつけた。
 その後ろからシンジが尻を上げたレイの両方の腰を押さえて調子を取り、大きく前後に腰を
振ってレイを翻弄した。
 レイはシンジの刺激に目の前が真っ白になった。この感じ、この感じとレイは思った。私が私で
いることの証し、気持ちいいこと、膚の触れあい、碇君が、セカンドが、ファーストがいること。
 生きていること。
 「あーあーあーあー、碇君碇君碇君っ」レイは下を向いたまま首を振り、シンジの動きに
合わせて自らの腰を動かし、シンジ自身を一層深く迎え入れ全身で抱きとめ、受け止めた。
 「綾波っ」シンジは小さな声で短く叫んだ。そして一瞬動きを止め、それからレイに渾身の
力をこめて自分自身を打ち込んだ。
 がくがくと腰が波打つように大きく揺れ動き、レイはがまんできなくなって腰を落とし、
全体重をアスカに投げかけてしまったがアスカは身じろぎもしなかった。
 シンジがその後を追うようにレイの背中に胸を押しつけた。しかし、アスカにそれ以上の体重を
かけるのははばかられたものとみえ、両ひじで自分の身体を支え、それ以上強く押しつけない
ようにしていた。
 レイの耳元にシンジの荒い呼吸がひびき、レイはその暖かい吐息が耳たぶに当ってまたどきどき
した。
 やがてシンジは息を整えるとゆっくりとレイから退いていった。
 レイはその最後の余韻をかみしめるように楽しんだ。
 汗で冷たくなったアスカの身体に弾力がもどっていた。
 レイはのろのろと体勢を変えてアスカの身体からすべり落ちた。
 シンジが後ろからレイの両方の腰に手を当てた。
 レイはシンジの手首を軽くつかんだ。
 シンジはレイの身体を引き上げるようにして床に立たせると自分は寝台のへりに腰を下ろし、
レイのひざを割って自分のひざをこじ入れた。
 「綾波、もういっぺん、いいかな…アスカ、まだだめみたいだ」
 レイはぎょっとしてシンジを見た。そしてだまってひざを広げると、シンジの両肩に手を添えて
腰を下げシンジを迎え入れた。
 「はあっ、い、碇君」レイはあえいだ。
 シンジはまるでこれが今日初めての行為のようにふるまった。両手をレイのわきの下から差し
入れ、肩に伸ばして強く自分に押しつけた。
 レイの両方の胸はシンジの胸でつぶされ、強い痛みと快感の刺激が腰からの刺激とからみあって
レイを翻弄した。
 レイはシンジの動きに合わせて腰を上下させそのたびに強さと角度と深さの変る刺激に何度も
何度も脳が全部とけてなくなってしまうような気分になった。
 「う…う…う…う…」レイはとうとう動きに合わせて声を漏らしはじめた。荒い息が声と混じり、
耐えるようなあまえるような微妙な調子になってシンジをますます高ぶらせた。レイの腰は
シンジをすっかり包み込み、形もきれいに合わせてシンジをからめ取っていた。そして潤った内壁と
シンジとの肌の触れあいがふたりの快感をますます高めていた。レイは両手をシンジの背中に
這わせ、汗の浮いた皮膚を、その汗をぬぐうようになでまわした。
 シンジの両手はそれに呼応するように動き、大きく広げた手のひらでレイのわきの下から腰まで、
そしてまたわきの下へと強くなで上げた。
 レイは全身を痙攣させた。このまま絶頂を迎えてもいいと思った。
 シンジはそれに応えるように腰の動きをいっそう強く早めた。
 レイはあごを上げ、顔をのけぞらせた。レイの両腕がシンジの首から離れ、レイの上半身がその
まま後ろに向かって倒れた。
 シンジの両腕がレイを支え、さらにレイの両腕がひっぱられてレイはまたシンジに抱きつき、
レイは大きくあえいでぶるりとふるえた。
 シンジの肩にあごを乗せて焦点の定まらない両眼を開くと、アスカがレイの両手を握って身体を
起こしていた。
 アスカはそのままシンジの背中に自分の上半身をもたせかけ、両胸をシンジの背中に押しつけ、
レイの唇を捕らえた。そしてレイの両腕を放すとシンジのわきの下から差し入れてレイの両胸を
掴み、もみ上げた。
 レイはシンジ越しにアスカのわきの下を捕らえて引きつけたが、全身の快感が感覚を狂わせて
いてその力は弱々しかった。レイはアスカの舌が唇と上下の歯を割ってはいってくるのを許し、
目を閉じ、舌と両胸とわき腹と腰からの快感の渦が全身を走りぬけ、骨をとかし、筋肉を伸ばし、
皮膚を蒸発させてしまって、全身がやわらかくふやけたなんだか正体の分からない物になって
しまったような快感に溺れた。
 「はあぁぁぁぁーーーーっ」レイは悲鳴とも泣き声とも快感の感極まったともどれともつかない
声を漏らした。
 シンジの腰ががくがくと震えてレイはそれに合せて頂上まで登りつめた。
 レイはしばらくシンジにすがりついたままの姿勢で動けなかった。
 シンジは両手をレイのふとももの下にまわすと、そっと持ち上げてレイの中から退き、後ろの
アスカにも注意しながらそのまま寝台に横になってレイを腹の上に乗せ、姿勢をずらして寝台の
中央にたてに横になってからレイをわきにずり降ろした。
 レイはシンジのなすがままになりながら、アスカがその後を取るのに気づいた。
 アスカは汗で重くなった金髪をかき上げ、反対側の手でシンジ自身を手に取るとまだレイと
シンジの体液で濡れているのをいいことに、汗で濡れた指でこすり上げた。そしてシンジの変化を
確認すると「今度はアタシ、いいわね」と念を押すように言ったがその口調は台詞とは裏腹に
甘えがあった。
 シンジは微笑すると両手を広げてアスカを迎えた。さすがに上になる気力はないものと見え、
アスカはすぐにそれを悟って自らシンジにまたがって腰を下ろした。
 「ふうっ」アスカは侵入に合わせて声をあげ、両手をそろそろとシンジに這わせると、上体を
降ろして胸をシンジと合わせた。
 シンジはアスカの背中に手をまわし背中全体を大きくなで回しながら腰を動かした。さらに
アスカから両頬を押さえられると、アスカの唇を捕らえて全身で深い接合にはいった。
 アスカはシンジの腰にひざを折ってかがみ込む姿勢でまたがっていた。アスカの尻が調子を
とって上下し、金色の髪が背中を割って肩を越え、シンジの顔や胸や肩や両腕を被っていった。
 金色の雪のようだとレイは思った。一度、本当の雪を見てみたい。どんな気持ちなのだろう、
冷水のシャワーを浴びたことやプールを泳いだことはあるが、凍った水の冷たさはコップの中の
氷しか知らない。雪の中で愛しあうのはどんな気分なのだろう…レイはまだ自分のからだが
うずいてシンジを求めていることに気付き、驚いた。今日はどうしてこんなに、いつまでも
シンジが欲しいのだろう、碇君もそう…二度目に愛しあったとき、いつもの碇君よりもずっと
激しかった。そして今も…
 シンジは直前に二度もしたとは思えない激しさでアスカと愛し合っていた。アスカは先程の
絶頂感が全くおさまっておらず、さらに刺激を受けてますます興奮していた。真っ白な肌は
血管が浮き、日焼けしたように赤く染め上がっていた。今はシンジの口から唇が離れ、シンジの
頬に頬を重ねておおむねレイの方を見つめていたが、開いた両眼は焦点が合っておらず、
シンジの荒い吐息も聞こえていないようだった。腰だけが機械的な動きのように上下して
シンジからの快感をもっと多く、もっと深く引き出し、受け止めようとしていた。
 レイは片手をふたりの接合部に伸ばして手のひらを上に向け、アスカの局部をなで回した。
 アスカはもうそれにも反応しなかった。
 絶頂まで高まっている快感が、もうそれ以上の神経の刺激を受け入れる余地がないように思えた。
 アスカは腰を下げてシンジの下腹部との間でレイの手をつぶした。そこで初めて何かあると気が
ついたように腰を震わせたが、じゃまにしてよけたり、どかせようとしたりはしなかった。
 レイは空いた片手で自分の胸を押した。
 まだ足りていないのだと分かった。レイの身体は自分の指にも敏感に反応し、また膨張して
乳輪が膨らみ、乳頭が立ち上がった。胸全体が脈動して青い血管が浮き上がった。
 レイは片手を胸から離すと、その手でシンジの片手を掴み、自分の股間に導いた。
 シンジの指は反射的に反応してレイの局部を捕らえると、なんの抵抗もなしに進入してきた。
 「ああっ」レイは声を漏らし、片手で自分の胸を掴んだ。また全身が快感の波に包まれた。
 「シンジっ、シンジっ」アスカがため息混じりの声を漏らした。「いいよアタシいいわよーっ
 シンジーっ」
 シンジの腰の動きとそれに応えるアスカの尻の動きが大きく早くなり、シンジの腰が上がり
アスカの尻が下がってふたりが一番深くなったところで動きが止まった。それからシンジの腰が
下がりそのままアスカの腰が下がってふたりは大きく息をついた。
 同時にレイもシンジの指からもたらされた快感でもう一度小さな絶頂を迎えた。「ふぅ…」
 空調機の静かなうなり声が室内に響いていた。厚い調光ガラスを通して、夕方の蝉の悲しげな
声が響きはじめた。午後の陽光はいつのまにか影を長く伸ばしはじめていた。
 アスカが長いため息をついて腰を持ち上げ小さくうめいた。そしてシンジのわき腹をつついて
わきに退けさせると自分は寝台の中央にひざを開いてあおむけに横になった。
 「今日は…すごかったわ」アスカはぽつりと言った。「どうしたんだろうアタシ達。いつもと
 ちがう」
 「久しぶりに近接戦闘したからじゃないかな」シンジが言った。「まだ参号機…使徒を倒した
 興奮が忘れられないのかもしれない」
 「そうね」レイはうなずいた。「でも、それだけではないかもしれない」レイはアスカの額に
かかった金髪を直した。
 「ありがと…でもファースト、それどういうこと」
 「戦闘の後、今日一日、なにもなかったからじゃないかしら」
 「と、言うと」シンジは疑問符をつけた。
 「戦闘の翌日には学校で授業を受けて、あたかも一日前のことが何もなかったように一日が
 すぎるわ。戦闘の恐怖は忘れられても、参号機をナイフで切り裂いたときの感触は忘れ
 られない。でも今日はなにもなかった。そしたら私思ったわ。こんなに無感動な一日がすぎた
 のは本当に現実だったのかしらって。私、本当に生きているのかしらって。だから生きている
 ことの証しが欲しかったんだと思う。快感の刺激があって初めて生きているんだ、これは夢
 ではなく、昨日の戦闘で実は死んでいたということはないと分かったんだと思う」
 「そうねえ」アスカは自分に言い聞かせるようにうなずいた。「それはいえるわ」
 「単純な、戦闘の引き起こす興奮だったら、一晩も続かないよね」シンジもうなずいた。
 「アタシ達、やっぱり死にたくないのよね」
 「そうだ」
 レイはシンジの口調から、話題が変わったことに気付いた。
 シンジは上体を起こし、座り直した。
 レイはシンジに合わせて姿勢を変え、膝を折って座った。
 アスカは首をまわしてふたりを見、尻をいざるように動かしておおむね正三角形の頂点に位置
するように座り、シンジに振り向いた。
 「何よ」
 その口調から、レイはアスカが新しいパイロットのことを話題にしたくないのが分かった。
 「トウジの…」
 「絶対にイヤっ」
 「アスカ、まだ分かんないの」
 「分かんないっ、シンジも分かんないっ」
 アスカは立ち上がり、きびすを返し、何も身にまとわないまま床に飛びおりて扉を開き、部屋を
出て行った。
 「アスカ」シンジが叫んだがアスカは振り向きもしなかった。
 レイはアスカが玄関ではなく居間に向かったことに気づいて少しほっとしながら後を追った。
 「碇君ここにいて」
 「綾波…」シンジは言いよどんだ。「わかった、たのむよ、綾波」
 レイは無言でうなずいた。
 アスカは居間の隣の台所で、冷蔵庫から出した牛乳を飲んでいた。
 「セカンド」レイはアスカに近づいた。
 「アンタ、どうして平気なの、信じられない」アスカはからのコップを食卓に音を立てて置いた。
 「アタシがなんであんなやつと…」
 「わたし達、チルドレンだから」
 「わかってる…わかってるわかってるわかってるっ」アスカはうつむいて首を振った。
 「理屈ではずっとわかってるわよっ…でも」
 食卓にこぼれた涙がきらりと輝いて光を失った。
 「セカンド、あなた、鈴原君を迎えるのが嫌なの、碇君を失うのが嫌なの」
 「両方よ」アスカは叫ぶように言った。「シンジは…シンジはアタシだけのものと思ったのに…」
 そしてはっとして赤く泣きはらした顔をあげてレイを見た。「ファースト、あなた…」
 レイはだまってうなずいた。そして、アスカに顔をよせると、まぶたと頬に唇をよせて涙を
ぬぐった。左目、そして右目。
 アスカはレイの唇が離れるまで動かなかった。両方の手をまっすぐ下におろして固く握り締め、
全身をぶるぶると震わせていた。涙は後から後からあふれて止まらなかった。
 やがて、堅く結ばれていた唇が開き、何度かのためらいの末、アスカはか細い声で言った。
 「ファースト、ごめんなさい。アタシ、アンタの心に気づかなかった」
 レイはアスカの背中に片手を伸ばした。
 「碇君のところに行きましょ」
 アスカは首を振った。
 「シャワー浴びてくるから。それまで待ってて」
 「わかった」レイはうなずいた。
 浴室にはいるアスカを見送り、レイはアスカの部屋にもどった。
 シンジは寝台に座って不安そうにレイを見た。「どうだった」
 レイはうなずいた。「わかってくれたわ。シャワー浴びたらもどってくる」
 シンジはほっとして微笑んだ。「よかったよ、ありがとう、綾波」
 レイはまたうなずいた。

 翌日、鈴原トウジは何事もなかったように登校してきた。
 放課後シンジはトウジを誘い、ふたりはレイの部屋に向かった。
 「何でワシが綾波の家に行かならんのや」トウジは機嫌が悪かった。黒いジャージのえりの
内側で、首筋に汗がしたたった。
 「重要なことなんだよ」シンジはなにげない風を装って言った。「エヴァのパイロットの件は
 学校じゃ話せないから」
 「ワシはもう乗らん、というか乗れへん」トウジは首を振った。「もう機体がのうなってまった
 からな」
 シンジは首を振った。「ドイツで最終艤装中の四号機は日本にまわされてトウジが乗るんだ。
 ミサトさんからそう言われてるはずだよね」
 「お見通しかいな、かなわんな。ほなら、なんでネルフ司令部に行かんのや、エヴァの話
 やったらそこでしたらええやないか」
 シンジはますます声を低くした。「エヴァの話ならそこでもできる。でもこれは、パイロットの
 話なんだ、僕たちだけの」
 「はぁ」トウジは理解不能という表情だった。
 ふたりはエレベータを降り、黙ったまま並んで歩いてレイの部屋まで来た。トウジはそこで
立ち止まり、扉を開こうとするシンジを見た。
 「センセイ、呼び出しとかせえへんのんか」
 「ああ、これ、壊れてるんだよ」シンジは開きかけた扉のすき間に呼びかけた。「綾波、
 はいるよ」そして扉を開き、トウジを招いた。
 「女の部屋にワシらだけではいるやなんて」
 シンジは微笑してトウジの背中を押し、玄関の中に押し入れた。「大丈夫だよ、他にもいるから」
 「他…って、なにぃ」
 シンジはくつを脱ぎ、トウジを先に立てて中に進んだ。
 レイはこの一部始終をシンジの意識を通して観察していた。
 今、トウジは部屋の入口に立ち、唖然としていた。
 レイは寝台のわきに両腕を抱き、片足を曲げてつま先立ちになって立ち、アスカは同じように
 両腕を抱き、トウジに向けた食卓の椅子に足を組んで座っていた。
 ふたりとも何も身につけていなかった。
 トウジの後ろでシンジがシャツを脱いだ。
 レイは言った。
 「ようこそ、クラブ・チルドレンへ」
		

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